だから愛してるっていってるじゃん。その1

なんで分かんねぇかな。

こん、とつま先に当たった小石をため息混じりに蹴飛ばした。ころんころんと転がっていく石ころを、ひたと見つめると、もう一度大きなため息をつく。正直、なんといっても怒りを通り越して飽きれるというものだ。さきほどの、啓太のその行動と言葉は。

「おまえってけっこうな八方美人だよなぁ? 俺に好かれるのと周りに好かれるのおんなじなんじゃねぇの? だれにだっておんなじ顔で笑ってよぉ。」

イラだったような声を尖らせながら、きろりとにらみ下ろされたその視線を受けながら、誓(せい)は居心地の悪さを感じた。明らかな八つ当たり。なにかきっと面白くないことがあったに違いない。イライラしていた背中は朝から知っていた。知っていたけど、理由が分からなかったから、ほうっておいた。子供の頃からそんなところ、ちっとも変わってない。ころころと転がって、てん、てん、と動きを止めた石ころをふたたび誓はつま先で蹴り上げた。

「はぁ? なに言ってんの? 意味わかんねぇし。」

軽く眼をしかめきろりと見上げる誓の瞳が、イラだった啓太の顔をとらえた。きりりと奥二重で鋭い誓の視線を物ともしない啓太がもう一度、イラだったようににらみ返した。おまえのそんな目つき、もう見慣れてんだよ、とでも言いたそうなその、顔。ちっ、と舌打ちが聞こえてきそうな啓太の顔を見据えていた誓だったが、そのうち啓太からの視線の居心地の悪さと苛立ちに座っていた席から立ち上がった。それも、蹴るような勢いで。

なに言いてぇんだかわかんねぇけど。

そんな思いを込めて、がつん、と。啓太を見据えたまま。蹴り上げた椅子もそのままに、す、と肩をわざと掠めて通り過ぎた。ざわざわ、と一瞬どよめいたクラス内も、す、と誓が啓太の横を過ぎると同時にぴたりと納まる。それはほっとした空気ではなくて、これからなにか起きるんじゃないか------あんにいうと、啓太と誓の喧嘩が始まるんじゃないか------という一触即発な空気に変わった。が、啓太はそのまま誓の背中を見送ると、ばつが悪いというように自席に着く。憮然としたまま頬杖を付き、なにかを見送るかのように窓の下に見える校庭をじっと見下ろした。たぶん帰ってしまうのだろう誓を見るのだろうことは分かったが、それを言葉にするものはいない。そもそも、周りだってなんで誓と啓太が言い合いを始めたのか、だれも知らないのだ。


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テーマ:BL小説 - ジャンル:小説・文学

2006.07.06 | | Comments(104) | Trackback(0) | 学生編

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猫の散歩道というサイトでボーイズラブなオリジナル小説を書いてます。

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